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2007.06.01 二つ名
  本日のデータ 64.0kg  前日差 -0.2kg 体脂肪率 19.3%


 久々にトラバテーマをやってみようかと

第279回「こんなあだ名をつけた・つけられた」



 えー、ご承知のように、アタシのモチゾーというのがそもそもあだ名なんですが。あだ名とは別に『二つ名』ってぇものがございます。実はこれも辞書には載っていない言葉なんですが、時代劇なぞお好きな方ならご存じでしょうか。「ましらの三次」や「すっとびの辰三」はたまた「赤い彗星のシャア」なんってのもあります。普通こんなふうに『何々の』と名前の前に付けて使うんですが、「直線番長」とか「東海の種馬」や「生え際の魔術師」とかとか、直接その人を呼ぶのに使うあだ名とは違い、その人を形容するための名前が二つ名ということでしょうか。

 えー、実は不肖モチゾーにもこの二つ名がございます。もう十年以上も昔の話になりましょうか。ある時所用から戻ってきますとうちでおふくろがアタシを呼ぶんです。何かしらと思っていって見ると流しの下の棚に入れてあった一升瓶からマムシが逃げたっていうんです。

 なんか、地方色が濃くなってきましたが(汗)この後は「...続きを読む」で
 えー、ご説明しますと、うちの田舎の方じゃマムシが出るんですが、これを捕まえて焼酎漬けにするんです。塗れば火傷や腫れもの打ち身などの薬になります。飲んでも滋養強壮に効くってぇますが、何とも匂いがきつくて普通には飲めるような代物じゃございません。このマムシを焼酎に漬け込む前に、しばらく生きたまま一升瓶の水の中に入れておいて肚《はら》のなかのものを出さしちまうんです。なんで一升瓶の水の中かといいますと、マムシってのは陸上ではとぐろを巻いて、身体をバネにして跳ぶんですな。空の一升瓶だと直ぐに跳び出ちゃうんです。そこへ水を入れておいてやると、足場になる地面がありませんから跳ぶことが出来ない。そうしておいて、一升瓶の口に小枝の先をとがらせたモノを束にしてフタの代わりに突っ込みます。こうすると空気も入るし、枝がとがってますから万一マムシが跳んでもなかなかフタを押し開けられないという工夫です。

 しかし、どうもその時はフタが緩んでいたのか、はたまたマムシの活きが良かったのか、一升瓶から出ちまった様子で。流しの下はピッタリとした箱になってますからそこから出ることはないようなんですが、そのままにもしておけない、お前何とか捕まえて、一升瓶に戻せとおふくろはいうんですが...言うは易し行うは難し。だいたい件のマムシだって、何もアタシが捕まえてきた訳じゃないんです。山仕事をする知り合いに貰っておいてあったやつなんですな。なんでアタシがこんなことをと思いますが、愚痴を言っててもマムシが自分から一升瓶に戻る訳じゃない。仕方ないんで捕まえる算段をしたんですが...確か金火箸があったと思ってあちこち探すんですがどうにも見つからない。そうこうしているうちに気が焦ってますから、これはもう手で捕まえてやろうという気になってきます。人づてに聴くところに拠るとマムシに限らず蛇ってぇモノは後ずさりをしないもんだそうで、ですから頭の後ろの方から手を出して首根っこを押さえちまえば咬まれることなく捕まえられるって話なんで。軍手をはめて件のマムシをにらみつけます。見てみるとそれほどの大きさじゃない。30センチほどで細身の身体。片手をマムシの前でひらひら振ってそっちを向いた隙に後ろから首根っこを押さえようって作戦なんですが。マムシの奴もなかなかに隙がない。鎌首をもたげて左右に牽制してきます。マムシの動きが止まったと思った瞬間、さっと左手を出したのですがマムシがひょいと振り向いた。振り向いてアタシの人差し指にカプリ!うわあああ。必死にふりほどいて再びマムシを流しの下に押し込めなおしました。見てみると人差し指にはマムシの牙の後が一カ所。輪ゴムで止血をして時間を計り119へ電話しました。隣町の総合病院へ自分で行くから、消防署の方から連絡しておいてくれと頼んで車で走ります。別段苦しくも何ともなく10分くらいで病院へ着きました。そのころにはアタシの方も大分落ち着いていますし、まあ大したことはないなと高をくくっていたわけです。しかし、実際にはマムシに咬まれると言うことはアタシが考えていたより大事だったようで...

 病院へはいると待合いになっているロビーに受付があります。アタシが近づくとにっこりと微笑む受付のお嬢さん。
 「すいません、消防署から電話が来ていると思うんですが、隣町のモチゾーですが」
 といった瞬間にお嬢さんの顔が凍り付きました。そのまますくっと立ち上がるとロビーから数メートル離れた処置室の、そのまた奥へと聞こえるように大声で
 「先生!マムシの、マムシのモチゾーさんがぁっ!!!」

 悲鳴のように発せられたその声は広いロビー中に響き渡りました。それから長い間、アタシは『マムシのモチゾー』という二つ名を戴くことになったという...『モチゾー先生マムシに咬まれるの巻』でございました


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